Cloudflareとはいったい何者か?
~世界の95%へ、約50ミリ秒で到達するとんでもない高速ネットワーク
この記事の目次
私たちドーモは、2019年からCloudflareの代理店として販売に関わってきました。それでも、「Cloudflareとは何をする会社なのか?」と問われたとき、ひと言で説明するのは実はそう簡単ではありません。
なぜならCloudflareは、CDN(コンテンツ配信ネットワーク:Webサイトの表示を高速化し、負荷を分散する仕組み)を中核として提供する一方で、セキュリティや企業ネットワーク、さらには開発者向けサービスへと、急速に事業を拡大してきたからです。従来の「CDN会社」、「セキュリティ会社」といった分類で考えると、比較の対象となるような競合が存在しておらず、その全体像が捉えにくいのです。それをこの資料によって、少しずつ紐解いていきましょう。
1. 成長を続けるCloudflare
Cloudflareは現在、どこまで成長しているのでしょうか。

2026年第1四半期の投資家向け資料には、次のような数字が示されています。
- 世界125か国以上、335を超える都市に展開
- 約1万3,000のネットワークと直接接続
- 総ネットワーク容量は500Tbps
- 世界のインターネット接続人口の約95%が、Cloudflareの拠点から約50ミリ秒以内
- 年間売上換算額が10万ドルを超える大口顧客は4,400社以上
- 大口顧客数は前年同期比25%増
- Fortune 500企業の42%が有料顧客
この中で注目したいのが、「世界のインターネット接続人口の約95%へ、約50ミリ秒以内で到達できる」という点です。50ミリ秒は、1秒の20分の1です。
これは、世界のほとんどのインターネット利用者に対して、物理的に非常に近い距離からサービスを提供できることにほかなりません。もちろん拠点数が多いからこそ可能になることですが、強みはそれだけではありません。Cloudflareは、通信事業者、クラウド事業者、大企業など、約1万3,000のネットワークと直接つながっています。そこに重要な意味があります。
このような接続網を使って、企業のWebサイトやシステムを高速化し、サイバー攻撃から守り、安定して利用できるようにしています。上に示した図の世界地図は、単なるデータセンターの配置を示しているだけではありません。Cloudflareが世界規模の「インターネットの交差点」へ成長していることを表しているのです。
2. 無料サービスから、大企業の基幹インフラへ
かつてのCloudflareには、「無料で使えるCDN」や「個人開発者向けの便利なツール」といった印象が強かったかもしれません。しかし、現在の顧客構成に目を向けると、その姿はそこから大きく変化してきています。
たとえば、年間売上換算額が10万ドル(1億6000万円)を超える大口顧客は4,400社以上に達し、前年同期比で25%も増加しました。実に、Fortune 500企業の42%が彼らの有料サービスを活用するまでになっているのです。
※為替レートは、1ドル=約160円として金額を計算している(以下同様)
さらに、大口顧客からの売上は全売上高の72%を占めています。Cloudflareは、無料サービスを提供する新興インターネット企業という段階をすでに越えています。現在では、大企業のWebサイト、業務システム、社内ネットワーク、セキュリティを支える基幹インフラ企業へと成長を遂げていると言えるでしょう。
もともとのCloudflareの無料サービスは、同社の成長を支えるための入口という役割を果たしてきました。小規模なWebサイトやスタートアップは、無料で気軽にCloudflareを導入し、事業の成長に合わせて有料プランや別のサービスへ、利用範囲を広げていきます。
無料版は単なる試供品ではなく、将来の有料顧客との接点をつくり、Cloudflareの市場を広げる役割を果たしているのです。
3. Cloudflareは何を販売しているのか
Cloudflareの出発点は、確かにCDNでした。先に触れたように、CDNとはWebサイトのデータを世界各地のサーバーに分散させ、利用者から物理的に最も近い場所からコンテンツを配信する仕組みです。これにより、Webサイトの表示スピードを劇的に向上させると同時に、急激なアクセス集中が起きてもサーバーをダウンさせることなく、安定した配信が可能になるのです。
Cloudflareは、このネットワークをセキュリティ機能の向上や企業システムとの接続にも活用してきました。現在は、アプリケーション開発や実行のための基盤にも事業領域を広げています。
個別のサービスについては、後の章で詳しく説明します。ここで押さえておきたいのは、一つの共通ネットワークから複数のサービスを提供している、ということです。
Cloudflareの顧客は、まずCDNやWebセキュリティ機能を導入します。その後、Cloudflareへの信頼が高まり、利用範囲が広がるにつれて、企業ネットワークや開発基盤などを追加していきます。
一度獲得した顧客へ、後から複数のサービスの提供を追加し、顧客あたりの売上を拡大していく。いわゆる連続したアップセル。これがCloudflareの基本的な成長モデルです。
4. アカマイとの業績比較
Cloudflareの現在地を理解するために、CDN市場の先行企業であるアカマイと比較してみましょう。2026年第1四半期の業績は、次のとおりです。
2026年第1四半期 | Cloudflare | アカマイ |
|---|---|---|
売上高 | 6.40億ドル | 10.74億ドル |
売上成長率 | 34% | 6% |
GAAP営業損益 | 6,200万ドルの赤字 | 1.14億ドルの黒字 |
GAAP営業利益率 | -9.7% | 約11% |
営業キャッシュフロー | 1.58億ドル | 3.13億ドル |
※GAAP(Generally Accepted Accounting Principles)とは公正妥当と認められる会計原則 のこと
※業績比較は、両社とも2026年3月31日終了四半期時点のもの
現時点では、アカマイの売上規模はCloudflareの約1.7倍です。アカマイには、長年にわたって築いてきた大企業中心の顧客基盤があり、利益とキャッシュを安定して生み出しています。
一方、売上成長率ではCloudflareが大きく上回ります。Cloudflareの売上高は前年同期比34%増でした。これに対して、アカマイは6%増に留まります。
両社の違いを端的に表すなら、アカマイは「規模と利益で先行する会社」、Cloudflareは「高い成長率で追い上げる会社」です。
5. 成熟したアカマイ、拡大を優先するCloudflare
アカマイは、2026年第1四半期に1億1,400万ドルのGAAP営業利益を計上しました。営業キャッシュフローも3億1,300万ドルに達しています。ただし、事業の種類別に見ると、すべてが同じように成長しているわけではありません。
セキュリティ事業は前年同期比11%増、クラウドインフラ事業は40%増でした。一方、従来型の配信およびその他クラウドアプリケーション事業は7%減少しました。つまりアカマイは、利益を生み出しながらも、成長が鈍化した配信事業から、セキュリティとクラウドインフラへ重点を移しています。
これに対してCloudflareは、2026年第1四半期にGAAPで6,200万ドルの営業赤字を計上しました。一方、株式報酬などを除いた非GAAPでは7,300万ドルの営業利益を確保しています。営業キャッシュフローは1億5,800万ドル、フリーキャッシュフローは8,400万ドルでした。
Cloudflareは事業としてキャッシュを生み出し始めていますが、会計上はまだ成長投資の負担が大きく残っています。現在の利益を最大化するより、ネットワークの拡張、新製品の開発、大企業向け営業へ投資し、将来の市場を獲得することを優先している段階と考えられます。
6. 売上高は5年間で約5倍
Cloudflareの売上高は、2020年の4億3,100万ドルから、2025年には21億6,800万ドルへ拡大しました。5年間で約5倍です。
2026年第1四半期の売上高は6億4,000万ドルで、前年同期比34%増となりました。会社が示した2026年通期の売上高見通しは、28億500万ドル〜28億1,300万ドルです。
既存顧客の利用拡大を示すDollar-Based Net Retentionは、118%でした。これは、1年前から継続している同じ顧客群の売上が、解約や利用縮小を差し引いても18%増えたことを意味します。新しい顧客を獲得するだけでなく、既存顧客が利用するサービスを増やしていることが、Cloudflareの高い成長率を支えているのです。
※Dollar-Based Net Retention(売上継続率)とは、新規顧客の獲得分を除外した上で、既存の顧客から得られる売上がどれだけ増減したかを測る指標
7. Cloudflareの業績をどう見るか
Cloudflareとアカマイの比較からは、成長段階の違いが見えてきます。
アカマイは、Cloudflareより売上規模が大きく、すでにGAAPベースで利益とキャッシュを安定して生み出しています。ただし、従来型の配信事業は縮小しており、セキュリティとクラウドへの事業転換が必要となっています。
Cloudflareは、現時点の売上規模と収益性ではアカマイに及びません。しかし、売上成長率、大口顧客の増加、既存顧客の利用拡大では強い勢いを示しています。
Cloudflareを評価するうえで重要なのは、次の3点です。
- 30%前後の売上成長をどこまで維持できるか
- 大口顧客へ複数のサービスを販売できるか
- 成長投資を続けながら、GAAPベースでも利益を生み出せるか
Cloudflareの課題は、ネットワークの大きさを証明する段階から、そのネットワークから継続的な利益を生み出す段階へ移行できるかどうか、ということになるでしょう。
8. まとめ ― 巨大なネットワークを収益へ変える会社
Cloudflareを理解するための要点は、次の三つです。
- 世界のインターネット接続人口の約95%へ、約50ミリ秒以内で到達できる巨大なネットワークを持っていること
- 共通ネットワークから複数のサービスを提供し、顧客当たりの売上を拡大できること
- アカマイより売上規模と収益性では小さいものの、はるかに高い成長率で事業を拡大していること
Cloudflareには多数の製品があるため、一見すると複雑な会社に見えますが、ビジネスの流れは一貫しています。
- 世界規模のネットワークを構築する
- 無料サービスを含む幅広い入口から顧客を集める
- 大企業へ浸透し、一つの顧客へ複数のサービスを提供する
- その結果として、顧客当たりの売上と会社全体の売上を拡大する
アカマイが「規模と利益で先行する企業」なら、Cloudflareは「統合プラットフォームと成長率で追い上げる企業」といえます。Cloudflareは、単なるCDN会社でも、単独のセキュリティ会社でもありません。巨大なグローバルネットワークを共通基盤として企業のITを取り込み、その利用範囲を広げることで、ネットワークの価値を収益へ変えていく会社なのです。
